2015/09/26
対人関係の苦手を克服 手術時の主治医から患者さんへの説明
手術を受ける患者さん(オペ患)には主治医が説明をしなくてはいけません。
それもどうにも嫌で苦手なものだった。
外科医は腕一本で患者さんの命を救うだけしていればいいわけではなく、その前後がとても重要で、私にとってはすごく負担だった。
が、仕事というものは、やりたいことだけできるわけではなく、やりたくない分野でこそ、仕事への評価が決まってしまうものなのかもしれない。
苦手を苦手のまま、自分を変える努力を怠ると、必ずしっぺ返しが来るのだと思う。
患者さん本人だけならいいにしても、家族が同伴するのが一般的で、その中での説明はやりたくなかったものです。
どんな手術をするのか、万が一どういう危険性があるのか、成功しないケースの可能性提示、そもそも本当に手術に同意するのか、麻酔から目覚めた時の錯乱状態のことまで、説明をしっかりしなくてはいけません。
それをしないと医療訴訟問題の火種となるわけで、避けて通れないだけに嫌々やっていたものだった。
そして患者さんやそのご家族に同意書への署名を書いてもらいます。
私の書痙がひどくなっていた時は、人様のサインを見るのもゾッとして嫌でたまらなかったし、説明から何から、心からやりたくない気持ちでいっぱいだった(当時はいつもこんな感じで悩んでいた)
しかし、文字を書くという行為、軽いものを持つという行為は、絶対に避けて通れない。
そこで書痙や手の震えの悩みを持ってしまうと、逃げ場がないということだから、毎日心が病んでいくのも無理は無い。
ずっと不安に苦しめられることになる。
さて、今は苦手意識はなくなり、逆に患者さんやご家族の不安いっぱいな心を解きほぐしたり、笑顔を引き出すような話し方ができるようになった。
よく成長できたと思う。
あの抜群に明るい自由自在な会話術の持ち主、岩波先生から会話や人間関係構築のエッセンスを教えてもらったり、盗んだものが、どれだけ私の人生を実りあるものにしてくれたかわからない。
昔はつまらない事務的な説明しかできていなかったのだろう。
苦手だと思っていることでも変われるものだ。
苦手を苦手としているだけでは、人生の可動範囲が狭まるだけなので、積極的に主体的に克服できるものからやっていくといいと思います。
できないことができるようになることほど、成長を実感できることはない。
余裕が無い時は、気の利いたことなんて言えないし、うまく話せません。
体が固い時は、精一杯いいことを言おうとしても、脳が思考停止して出てこない。
人間関係もぎこちなくなるし、会話も弾まない。
せいぜい事務的な対応しかできなくなり、人の心はつかめないし、離れていってしまう。
しかし、柔らかくなると、手の震えが出にくくなるのはもちろん、発想も気の利いた言葉もすべてが自然とスーッと出てくる。
説明時でも、心配な患者さんや家族が一番投げかけてもらいたい言葉をパッと把握し、一番いい言葉を発することができる。
その一言があるかないかで、医師と患者さんの信頼関係がなくなるか、強固なものになるのか分かれてしまう。
ちょっとしたことだけれど、とても大きいと思います。
医師というだけで『先生』と呼ばれプライドを保っているけれど、人間関係を成立させることが下手で、人望がない医師は多いと思う。
人望がないことを感じたくないから、よけいにプライドで身を固めて、孤独になっていく。
昔はそれで医師として成立できていたかもしれないが、もう今はそんな時代じゃない。
コミュニケーションスキルがない者は、どんな職業でも、やっていけないだろうし、生きづらい事この上ないと思う。
しかし、コミュニケーションスキルを身に着けたら、ちょっとした言葉の投げかけだけで、相手はその人の印象をガラッと変えることもわかっていった。
小さなことだけに、その人の本質がわかってしまうというか、人間関係、医師と患者さんの関係は奥が深い。
その機微がわかってきてからは、説明時も診察時もとても楽になりました。
弱点や苦手分野から逃げていたらダメだ。
逃げていたらもっと苦手になる。
生きづらいことこの上なくなった時、変わろうと思っても、脳は固まり、手遅れになってしまう前に、スキルを身につけるべきだと私は思います。
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コメント
いつも拝読しています
僕は研修医です。
しかし、人とのコミュニケーションが苦手で、緊張しやすい体質です。
手の震えもあります。神経症的な段階ではありませんが。
将来医師として一人前にやっていけるのかどうかが心配です。
特に患者さんやその家族とのコミュニケーションにすでに気おくれして、常に不安を感じている状態です。
先生がその苦手を克服したブログを読み、すごく希望が出てきました。
私も根っこから自分を見つめ直したいと思います。おすすめする岩波先生に相談しようと決意しました。
不安を感じて生きる人生はもう嫌です。
僕に希望を与えてくださり、ありがとうございます。
2015/09/28 12:33 by 半人前研修医 URL 編集