2018/08/21
書痙はとても大変です。
私も書痙にとても悩まされてきました。
医師という職業上、人前で字を書く機会が多かったからです。
書痙とは、人前で字を書こうとすると、極度に緊張が勝手に起こってしまい、腕や肩が固まり、字が書けなくなったり、ひどく下手な字になったり、震えそのものがひどくなったりします。
生きている限り、そして社会に出ている限り、人前で文字を書く機会は多いので、その日が近づくだけで、ドキドキそわそわ、そればかりに心がとらわれる、という人はとても多いと思います。
葬式や結婚式、ホテルの宿帳、不動産を買う時の書類記入、あげればきりがない。
書痙も多くが過緊張による心因性であるため、心の根本からの解決を目指さないといけないと思います。
そもそも書痙は、人前じゃなくて、一人で文字を書くときには発生しない症状です。
そして、意志の力ではコントロールできず、スイッチが入ったように、人前で震えてしまうため、理性の解決は不可能だと思っていいと思います。
書痙が嫌だからといって、ずっと人前で文字を書くことを避けていたら、いざ次書くときはますます萎縮して、書痙は確実に悪化します。
ここで日々の訓練が必要になります。
根本的解決は絶対必要だとして、日々しのがなくてはいけません。
書痙というコンプレックスがあっても、いや書痙というコンプレックスがあるからこそ、あえて、”人にズケズケと書かせる(代筆させる)”ことをしてみてください。
これは岩波先生から教わって、なるほどと思って実践を書痙がおさまるまでやっていました。
それを数多くこなしていくと、自分で書くわけではないため、書痙が起きたらどうする? 震えたらヤバイ、という予期不安から自由になった。
予期不安がなくなっていき、その場でも萎縮しないから、私が「よし自分で書いてみるか」という主体的な気持ちになって、記帳した時、驚くくらいすんなり文字を書くことができた。
ほんとうに嬉しかった出来事です。
その日は嬉しすぎて興奮して寝付けないぐらい、自分の人生に希望を感じました。
予期不安と緊張で逆に不眠症になっていた私にとっては、嬉しい[不眠症]でした。
ずっと底なし沼でもがき続けていた私が、はじめて書痙を克服していく実感を得たのです。
私の心にパーッと希望の光が差し込むような、あたたかさ明るさを感じました。
話題を戻すと、書痙になるのははじめから勝負ありです。
反射神経で自動的に震えるから勝負に負けます。
火に油を注いだら、炎が大きくなるように反射的になるから、止めようがありません。
どうしても震えないようにと我々は望んでしまうけれど、自分の文字を書くことをすべて、理由をつけてズケズケと人に書かせるだけで、かなり私は心に余裕ができました。
その心の余裕は脳の余裕につながります。
この余裕は非常に大事でした。
具体的に人にズケズケを書かせるとはなんなのか、結婚式の記帳の時を例に挙げましょう。
式場に入る時、記帳を求められますが、「いま腱鞘炎だから文字が書けないので、代わりに書いてくれませんか?」とズケズケと言うということです。
腱鞘炎じゃなくても、突き指をしているとか、なんでも理由はいいと思います。
書痙というコンプレックスは置いておいて、したたかに嘘をついてください。
書痙だからそういう対策をとってしまう自分を恥じることはしないでください。
萎縮して頼むと意味がありません。
ますます劣等感を感じるだけ。
相手も「変だな」と思ってしまいます。
そうではなく、本当にそう(腱鞘炎など)なのだから書いてほしい、という感じで、ズケズケとものを頼むのです。
その時に書いて欲しい文章は、免許証の住所でも、メモ書きでも示せばいいでしょう。
最初は違和感がありますが、それが続くと、頼むことも平気になってきます。
この図太さがとても大事で、萎縮してしまう自分から脱出するために、必要なことでした。
8割ぐらい、受付の人が書いてくれたら、最後の二割自分で書くなどしていけば、思う存分書痙克服の練習ができます。
その時は感謝の気持を明るく言うことです。
こちらに後ろめたさがある感謝はやめたほうがいいです。
これがズケズケと人にものを書いてもらう練習です。
悩みは全てそうですが、考え方がすべてだといっていい。
考え方の位置をずらせと岩波先生はよく言ってましたが、結婚式の記帳にしても、考え方を変えれば、すべてを好転させることができるのです。
私が岩波先生の「俺が書痙なら、こうする」という話を聞いて、随分と為になったと同時に、俺もそれをやってやろうと実行を心がけました。
決して脳の魔術師とか、潜在意識訴求技術だけの天才ではないのです。
そういう人が考えないことをズバッと指摘してくれる人間力が岩波先生の本当の魅力だと思う。
うしろめたさや萎縮した気持で、手術でも記帳でも取り組んでも、いくら頑張ったところで余計悪化するだけです。
これは私を含め、手の震えの罠に陥った者全てに当てはまることでしょう。
そういうとき発想の転換をすれば、人生は好転していくものだと、私ははっきりそのことで学ぶことができた。
ぜひ参考にして、皆さん自身の悩みと戦って、打ち勝っていってください。
日々耐える人生よりも、打ち勝っていくための最大限の努力は必要です。
書痙は克服できなければ、一生ついてまわる悩みだ
人前で文字を書く行為は、これからも死ぬまで続いていく。
いざ大変な覚悟を持って文字を書こうとしても、異常に震えてしまったり、変な字になったり、文字を書くこと自体ができなくなる、そして、その都度、人から同情されたり、変な眼で見られたりする、これがずっと繰り返されていきます。
屈辱だし、予期不安がひどいし、尊厳を失うことでもあるし、書痙は人生を滅茶苦茶に破壊してしまう。
何としても、みなさん、克服していきましょう!